漫画みたいな出来事

電話は不思議なツールだと思う。

メールともLINEとも違う、はたまたテレビ電話ともなんだか違うものだと思っている。

 

こんなことをふと思ったのは、古い漫画を読んだからだ。

1990年代~2000年前半頃に出版されていた漫画で、漫画の世界は当時のごく普通の生活が書かれている。

主人公もいたって普通の女子大生で、その子は友人と連絡を取るとき、自宅の固定電話を使う。

マンションの一室に家族で住んでいるその女子大生は、リビングと自分の部屋をつなぐ廊下で、家族に聞かれないように友人と電話をする。

 

なんだかこの感じ懐かしいなあと思った。

私が電話をよく使っていたのは小学生の頃だ。

休みの日の朝に友人から電話がかかってきて、母からその電話を受け取る。

その頃は子機というものがあって電話の側にいなければならない訳ではなかったので、

大抵、ベランダに出られる窓から外をなんとなく眺めながら電話をしていた。そして、電話を切ると私は遊びに行っていた。

 

携帯を持つようになった中学以降は、正直そんなに友人と電話をすることは無かった。学生時代は毎日のように部活があり、仲の良い友人たちとは毎日顔を合わせていたからだと思う。

この頃にはもう、固定電話を使うこともほとんどなくなっていた。

 

そんなこんなで電話にはあまり縁の無かった私が、唯一、「あれ、なんだろうこれ、今すっごく漫画に出てきそうなシーンだ。」と思ったのは、大学の友人と電話をしたときだ。

彼氏に振られたことを仲の良い友人グループのLINEで伝えたところ、その中の一人からいきなり電話がかかってきた。

「〇〇(私の名前)、だいじょうぶ?いやー、私も彼氏と別れた時友達から電話かかってきてさあ、めっちゃよかったんだよね~」

そんなことを確か言われた。

この電話には私も確かに救われたと同時に、こういうときって、電話とか本当にするんだと思うと笑えてきたのを覚えている。

 

漫画を読んで、電話を見て、今の家に引っ越す前の自宅で、部屋の窓際の段差があるところに座って、泣き笑いつつこの通話をしたことを思い出した。

 

漫画みたいな出来事は、世の中で沢山起こっているんだなあと思う。

終電を逃しちゃった話をする友人もいれば、会社で目の前の席の先輩から渡された資料に、メッセージ付きの付箋が貼ってあったという話をする友人もいる。

世の中いろいろで、漫画は別に嘘ばかり書いている訳ではないのか。と少し落ち込んだりもする。



大学の友人に電話をもらって嬉しかった私は、いつか自身が慰める側に回ろう。とも思う。けれど、その日はまだ訪れない。

とても良いことだけれど、来ないかなあとなんとなく夢見ている。